相手の顔色が気になってしまうと、本当は気持ちを伝えたいのに、じぶんを押し殺しているような感覚になることがありますよね。でもそれは弱さではなく、人との関係を大切にしたいという優しさの表れでもあり、人に寄り添える大きな強みでもあります。
そして顔色を伺うという行動は、他人との無用な衝突を避けて穏やかに過ごすための、じぶんなりの処世術でもあります。その根っこには「できるだけ平和に日常を過ごしたい」という静かな願いが隠れているのかもしれません。
もしそう感じているなら、「じぶんを知ってほしい相手は大切にしたい人だけでいい」と割り切るのも一つの方法です。誰にでも全てを見せる必要はありません。
ただ、今の状態が苦しくて「変わりたい」と感じているなら、どうして本音を言えないのか、その理由を丁寧に探っていくことが大切です。たとえば「嫌われることが怖い」なら、なぜ嫌われることが怖いのか。実際に嫌われたとしたら、何が起きると思っているのか。そんなふうに、何度かじぶんの心に問いかけてみてください。その奥には、じぶんが本当に大切にしたい想いや価値観が眠っているはずです。
心の深い部分が見えてくると、次にどうしたいのかも少しずつ分かってきます。関係が浅い人にも本音を言えるようになりたいのか、それとも大切にしたい人にだけ本音を伝えられたら十分なのか。この違いが分かるだけでも、次の一歩の方向が変わってきますよね。
本当は限られた相手にだけ本音を伝えられたらいいのに、関係が浅い人にも理解してもらおうと頑張りすぎると、心に矛盾が生まれてどんどん疲れてしまいます。
そのうえで「嫌われるのが怖い」と感じているなら、いきなり本音をそのまま伝える必要はありません。「私はこう感じた」というように、じぶんを主語にして話すだけでも相手が受け取りやすくなり、不安も少しやわらぎます。また「じぶんの意見に自信がない」ときは、意見として出すのではなく、「こう感じたんだけど、どう思う?」という相談の形に変えてみるのもおすすめです。
本音を伝えることは対立ではなく、お互いを理解するきっかけになることが多いです。そして、小さな本音を重ねることで、少しずつ安心できる関係が育っていきます。
どうかじぶんを責めずに、無理のないペースで、少しずつ「本音を話せる関係」を増やしていってくださいね。
あなたはこんな一面が隠れていませんか?
調和を守るタイプ
人の気持ちや空気の変化にとても敏感で、場の調和を乱さないように立ち回れる力を持っているかもしれません。これは幼少期やこれまでの経験のなかで、まわりを観察することで安心を得てきた人に多い傾向です。
心理学では「高い共感性」と「対人感受性」が組み合わさった特徴とされ、対立を避けて関係を円滑に保とうとする働きが強く見られます。
また、相手の気持ちを深く想像しすぎるあまり、自分の感情や意見を後回しにしてしまうこともあります。
けれどその背景には、人を傷つけたくない、関係を大切にしたいというあたたかい価値観があります。あなたのその優しさは、人とのつながりを丁寧に育てられる大きな強みです。
関連する心理学
Knowledge01
対人過敏性
他人の表情や言葉のトーンに敏感に反応し、相手の変化を素早く察知しようとする傾向のことです。これは過去の経験から「相手の機嫌を読むことで安心を得てきた人」によく見られます。周囲に細やかに気を配れる、繊細な感受性の表れでもあります。
Knowledge02
自己卑下的帰属
物事がうまくいかないときに「自分が悪い」と感じやすくなる心のクセを指します。本当は状況要因が大きいのに、自分を責める方向に意識が向きやすくなるものです。責任感が強い人ほど起きやすく、優しさが反転して出ている可能性があります。
Knowledge03
協調性
心理学の「ビッグファイブ」で示される性格特性のひとつで、他者との調和を大切にし、円滑な人間関係を築こうとする傾向を意味します。顔色を伺いやすい人はこの協調性が高い場合が多く、周囲が安心できる空気を作れる長所にもつながります。
Knowledge04
スキーマ
「嫌われると危険」「本音を言うとトラブルになる」などの深い思い込みが、無意識の行動パターンとして積み重なっている状態を指します。これは過去の経験から形成されるもので、意志の弱さではありません。自分のスキーマに気づけるだけで、心の負担は大きく減ります。
Knowledge05
自己開示の段階性
本音を伝えるには段階があり、いきなり深い気持ちを話す必要はありません。安全だと感じる相手に、小さな一言から開示していくことで、安心できる関係がゆっくり育っていきます。これは自然なプロセスであり、丁寧に関係を育てられるあなたの強みでもあります。